その場所は。

とても狭かった。
とても、痛かった。
とてもとても、辛かった。

 


……けれど。
とてもとてもとても、私は嬉しかった。

 

 

 

気だるい感覚が抜け切る頃には、時計の針が逆Lの字を作っていた。
……完全に遅刻だ、と気付くのにはそう時間がかからなくて。
失敗したなあ、と思う。
出席日数は足りるかなあ、と心配してみたりもする。
けれど、結局は……そんなことはどうでもよかった。
彼と共に居ること。
それさえ叶うのなら、他の何が犠牲になっても構わないと思うから。
『……んっ』
少しだけ手を伸ばし、彼の黒髪を撫ぜる。
目を閉じたままの彼は、それでも意識が覚める気配など無い。
しばらくそうしてから、黒いシーツの上で半身をもぞりと起こす。
都合、彼を上から見下ろす格好になった。
そこから、
柔らかい頬を。
細い首を。
そして……

生臭く濡れそぼった、その下も。

撫ぜた指先を見て、知らず笑みがこぼれる。
べったりとついたそれは、彼という存在を確かに感じさせてくれる。
ちょっと強い臭いも、気になどならない。

 

……うん、大丈夫。
コレが、彼の証。
だから。

『……ずっと一緒、だよ?』

呟き、私はぎゅっと抱き寄せた。
簡単に私の胸元に埋まる、彼の全て。
……それでも彼は目を開けない。
いつになったら目が覚めるのだろう。

 

 

私は愛する。
たった一人、私を思ってくれる彼を。
私は抱く。
今ここにある、彼の全てを。
たった一つ、彼という存在だったモノを。

 

 

 

 


彼の体液が染み込んだ、赤黒いシーツも。
彼の臭いがむせ返る、閉じられた空間も。
その全てが、愛おしイ。

 

 

 

 


……カレとトモにイルこト。
それさエカなウノナら、ほかノナにガギセイニなッテモカマわなイトオモウカラ。

 

 

 

 

 

 

 

ズット、イッショニ。


 

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