空は、青くて。
太陽は、赤くて。
その下にいる私は、とても幸せだった。
だって、隣に新くんがいるんだから。

……けれど。
「いい天気だねー」
「そうでもないけどな」
肝心の新くんが、ちょっとだけ不機嫌そうなのはどうしてだろう。
そこまでそっけなく返されると、こう、どうしたものか。
「……どしたの?」
「いや、別に」
「?」
何だろう。
ずーっと俯いたままで何が何やら分からない。
「むー……」
すごく気になるけど、ホントに何だろう?
……シャチ吉に聞いてみたいところだけれど、そちらはそちらで、

「きゅいきゅい!」
「きゅ?」
「ぎゅい!」

現地集合のお仲間と遠くで仲良く話し込んでるし。
……話の内容が果てしなく謎だったりするのだけれど、それは今はどうでもいいか。
「……にしても、誰もいないよな」
「そりゃそうっしょ。私たちしか来てないんだから、誰かがいるわけ……」
はたと気付く。

今。
この場には。
私と新くん以外、誰も存在しない。

白い雲。
黒い影。
その狭間にあるものは……何だろう。
それはどうでもいいのだけれど。

誰も存在しない。
誰も見ていない。
誰も。
だれも。
ダレモ……


……オーケー?


「……ルンルン?」
気付けば。
新くんの顔が、目の前に迫っていた。
「うえっ!?」
いつの間にか、妄想に耽っていたらしい。
「どうしたんだ?」
「あー、いや、その……」
くるくるクルクルぐるぐるグルグル。
そんな歌もあったなあとかどうとか。
混乱しまくった末の行動は、
「ていっ!」
「のわっ!?」
押し倒し、だった。
「ちょ、何を」
何か言いかけた新クンの口を、指で塞ぐ。
そして、呟いた。
「……しよっか?」
「!」
ごくり、と新くんが唾を飲んだのがわかる。
その顔は真っ赤で。
でも、あたしの顔もそれ以上に真っ赤なはずで。
「……」
「……」
どれくらい経ってからだったのだろう。
どちらから向かったのだろう。
それが自然なことみたいに、あたしと新クンの唇は近付いていって……

ざっぱーん、と。
白い波が、視界を遮った。

「ぶっ!?」
「ごぶぁっ!!」
モロに水をかぶって、2人して悶絶すること数十秒。
立ち上がって確認すると、当然のように全身びしょ濡れ。
「あ、はは……潮も滴るいい女、って?」
「……シャレになってないぞ、それ」
うん、シャレになってないよね。
でも、そうとでも言ってないと……気恥ずかしくてどうにもこうにも。
なので、話題を変えてみる。
「あー、もう昼かぁ」
気付くと、太陽は真南にあった。
1日の半分が、あっという間に過ぎ去っている。
「何か食べよっか?」
「……ああ」
何だか不満そうな顔をする新クンの腕を掴み、強引に組み合わせる。
そして、ゆっくりと歩き出した。
……少し進んでから、
「……ん。そっかー」
何となく気付く。
さっきの不満も今の不満も、きっと理由は同じ。
あてちゃったのかなー、と。
なので、
「?」
不思議そうな顔をしている新クンの耳元で、囁く。
「後で、しようね」

 

 

青い空。
白い雲。
赤く輝く太陽。
黒く伸びる影。

その下で一緒にいる、私たち。
きっと、ずっと……これからも。

 

 

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