ええと。
これは、夢であってほしい。
気付いたら、あたしは湖のほとりに立っていた。何の前触れも無く、いきなり、だ。かなり綺麗なトコロで、こういう意味不明な状況でなければゆっくり見て回るのもいいかな、と思うけれど。
とりあえず、そんなことはどうでもいい。問題は、目の前の湖のド真ん中。
すみすみが。
天使っぽいコスプレをして。
水面に立っているのは、一体全体どういうことなのか。
むしろ、これで夢じゃなかったら本気で悩んでしまう。
ともあれ、面白い状況であることは間違いないのだけれど。カメラさえ持っていたら写真を撮って凰華ジャーナルの表紙を飾りたいところだが、生憎と手ぶらだったのでそれは断念せざるを得ないとして。
「……えーと、すみすみ?」
『誰ですかそれは。私はこの池を護る者、シリア・ナード・レイですよ』
「……」
突っ込み待ちなのか。
むしろ突っ込んだら負けなのか。
そんなあたしの思いを他所に、すみすみ……もといシリア・ナード・レイは、両手を水面にかざす。すると、音もなく水面が割れて、中から二人の――あたしのよく知っている――人物が姿を現した。
けれど。
なんだろう、こう、二人とも妙に外見だけが違っている、ような。
『あなたが落としたのは、強気で親友を罵るかなっぺですか? それとも、弱気で卑屈な司センセですか?』
「どっちも嫌だよ!」
違うとか以前に、選択肢が絶望的すぎる。
強気で罵るとか、弱気で卑屈とか……いやまあ、とりわけ後者はそうじゃないと言い切れないけども、何か違う。
それに……少なくともすみすみは、かなっぺやセンセのことをそう呼んだりはしない。
あくまでもそれは、あたしが二人を呼ぶときの言葉だ。
だから。